幻想的な照明で柿川の舞台が美しく浮かび上がる会場。花火観覧シーンの中にこの映画の登場人物のモデルともなっている七里アイさんと嘉瀬誠次さんご本人が登場することになった。監督の心憎い配慮でシナリオに急遽、追加されたシーンだ。花火観客を演じるエキストラ衆のあたたかい協力の中、七里さんも嘉瀬さんも堂々と台詞付きの役を演じ切った。監督の「オッケ~!」に、一同拍手喝さい!
エキストラ30名と高校生演劇部が長岡空襲時の平潟神社内防空壕のシーンを演じた。防空壕の周囲を交差する赤やオレンジの照明が異様な雰囲気を醸し出す。防空壕セット内は膝まで水溜り。ギューギュー詰めのエキストラにバケツで水掛けする過酷なシーンだ。なかなか「オッケ~!」が出ない。妥協など許されない場面だ。何度も「もう一度!」が繰り返される。エキストラはずぶ濡れ状態で疲労困ぱい。冷えで毛布に包まれる子も。やっと「オッケ~!」が出た、思わず歓喜の声。もちろん、スタッフ一同も安堵した。エキストラさん達には思い出深い夏になったにちがいない。最後にスタッフと記念写真をパチリ。
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防空壕のセット | エキストラの衣裳にも注目 |
大正ロマンを感じさせる重厚な建物の前に、緑色のガーデンパラソルとテーブル、椅子が置かれた。あっという間にオープンカフェの出来上がり、雰囲気も仕掛けも上々だ。奥に控えた赤い帽子の水道タンクも威風堂々で見映えがする、実に良い。実はこのシーンは柿川周辺の喫茶店を探してロケする予定だった。ところが、竹内美術監督がこの公園をひと目見て、突然閃いた、「オープンカフェにしよう」と。名前は『Cafe 水道タンク』、天気晴朗にして雰囲気抜群。
この施設を保存管理している小林善雄さん(72)はこのセットを目の当たりにして、「ぜひ実現化したい!」と考えている。映画が公開されたら、ロケ地巡りで観光客も訪れるだろう。そうしたら、この空襲に耐え、長岡市民を見守り続けてきた水道タンクも喜んでくれるに違いない。
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水道公園 | カフェ「水道タンク」 |
松雪泰子さん演じる、遠藤玲子の故郷、天草市牛深町でのロケだ。ここでは、心強い助っ人、天草フィルムコミッションの小山真一さんに全ての段取りをお願いした。海をまたぐ赤い通天橋やモダンなハイヤ大橋、浮かぶ漁船を背景に撮影スタート。取材で自転車に乗った玲子の姿を軽トラックに乗ったキャメラが追いかける。さらに玲子の取材は続く。崎津天主堂の町、その後、登り窯のある水の平焼窯元に移動し、ここでオールクランクアップを迎えた。ちょうどこの時期は、台風15号の影響で天草の天候は不安定、気をもんだ。ところが、車で移動中は大雨なのに、「本番」に入ると不思議な事に雨が止み、カラッと太陽さえも顔を出す。すべて順調に撮影を終え、ホテルに戻ったとたん、強い台風と化した。
この夜は、天草市長はじめ天草宝島観光協会会長、ホテルアレグリアガーデンズのオーナーご夫妻のご配慮で大林組と天草組との交流の場を設けて頂いた。私たちはこの映画に多くの方々から関わっていただき、無事にクランクアップを迎えた事を心から感謝し、乾杯した。
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(渡辺)