
抑制された装飾のないさり気ない表現が効を奏しているのかもしれない。独特な栃尾の風景の光に包み込まれ、映画を浮かび上がらせている。それによって全体にある種の不思議な空気が流れていく。
同郷の五藤監督、音楽の原朋信、エンディング曲のスネオヘアーらが感じていた栃尾に入った時の何とも言えない、もしかしたら世界中の誰もが感じる原風景がそこに顕れているのだろうか。大林宣彦作品のような気取った懐かしさではない、底から込み上げてくる今まで触れられなかった本質的な品の良さが画面に定着しているかのようだ。これは監督の人柄の良さが滲み出ているのかもしれない。
夏の終わりと短い時間の中で撮影された中に一人々々の役割が触媒のような栃尾に導かれ、果たされた映画であることは確かだろう。
贔屓目ではなくスネオヘアーのエンディング曲「ホームタウン」は、映画に溶け込んでいく余韻を留める何度でも聴きたい名曲に仕上がった。
同郷で固めたスタッフ陣のコンセプトが何か新しい構造になって、染まるように焼き付けている。